整体の定義
まずそもそも「整体」とは何なのか?
今の日本における「整体」の定義というのは非常に曖昧で、様々な理論・流派があり混沌としています。
現在の日本の「整体」の歴史を紐解くと、戦国時代に体系化された柔術をはじめとする古武術の中で 「活法・骨法」 として受け継がれてきた手技療法や後述する「霊術」のようにオカルティックなもの、伝統中国医学の手技療法である「推拿(すいな)」、大正時代に日本に伝わった「オステオパシー」や「カイロプラクティック」などの欧米伝来のアカデミックな手技療法と、当時の施術家たち独自の工夫や思想などを加え、集大成としたものが現在 の「整体」 と呼ばれるものだと私は考えています。
整体の歴史的経緯
明治維新で日本に海外からの情報が大量に入ってくるようになると同時に、明治政府は「祈祷」や「占術」・「修験道」を廃止しようと禁止令を出しました。
それまで修験山伏が引き受けていた、日常の苦しみ・痛みを直接的に解決してくれる呪術へのニーズを引き受ける形で海外から伝来した「催眠術」・「心理学」と、日本の修験道・呪術文化が合わさり生まれたのが「霊術」と呼ばれます。
霊術は明治末期から昭和初期にかけて日本で大流行した民間療法です。霊術は、現在の新興宗教のルーツの一つでもあり、今も民間療法や健康法の中に姿を変えて生き続けています。
また霊術の歴史を研究した井村宏次氏は、霊術家が使う治療術として次のものを挙げており、これには手技療法が含まれていました。
とくに「祈祷」・「手当て」などの信仰療法・心霊療法と、手技などの物理療法を併用して治療することが少なくなかったと言われています。
1、霊術:気合術、霊動術、精神統一法、マジック、祈祷、交霊など
2、療術:手当て、レイキ、カイロプラクティック、オステオパシー、整体など
3、精神療法:暗示、催眠、精神療法など
4、心霊系霊術:心霊治療、超能力治療など
5、その他療法:健康法、断食、体操など
当時の日本の霊術家は、医療制度と技術の不備を背景に活動する者たちでした。
霊術は近代医学の正規医療に足りない部分、特に精神疾患の治療を補完する面があり、民間の霊術や精神療法への役割が大きかったため、大正期には当局からは黙認されていたようです。
しかし、当時のブームによる誇大広告やイカサマが横行したことで、医師会識者たちは彼らを批判し、警察からも昭和5年に届出制・広告制限などを含む警視庁令が出され、当時の霊術家たちは似非宗教の教祖や健康法指導者などに看板を書き換えていくことになりました。
次にアカデミックな流れとして、大正から昭和初期にアメリカから手技療法が導入され、従来の日本的・中国的な手技療法、民間療法に大いに影響を与え発展しました。
大正期には「山田式整体術講習録」の山田信一氏によって、アメリカのオステオパシーが日本に紹介されましたが、山田氏はオステオパシーと他の療術を組み合わせたものを「整体術」として紹介したため、オステオパシーそのものではなく「山田式整体術」などの名で日本で普及・発展したと言われています。
その後にカイロプラクティックやスポンディロセラピーといった脊椎に働きかける手技療法が導入され、大正期はオステオパシーもしくはカイロプラクティックが「整体」と訳されていたようです。
大正〜昭和期には本当にさまざまな手技療法があり、特に戦後は現在でも有名な「野口整体」の野口晴哉氏、「操体法」の橋本敬三氏がいて、これらは今の整体の源流の一つとも言われています。
整体の国際的認識
日本の整体師の仕事は医業類似行為ですが、過去の最高裁の判決で「憲法22条は何人も公共の福祉に反しない限り職業選択の自由を有する」ことで保障されています。
ただ、医療系国家資格者の一部識者から、「整体は“人の健康に害を及ぼす恐れがある医業類似行為であり、国家資格化されずにこれを行う事は国民の利益に反する”」と懸念されています。
しかし、2012年に代替医療の国際的学術雑誌で、整体・鍼治療・マッサージ治療の効果を比べるランダム化比較試験の論文が発表され、整体に科学的根拠が示唆され、「SEITAI=整体」・「RYOJUTSU=療術」が医学論文に記載されました。
この論文著者、一般社団法人日本鍼灸療術医学会代表理事の立花和宏氏は、「整体についての客観的数値による効果が、国際的な学術雑誌に取り上げられるのはこれが初である」と述べています。
この事から私は日本における「整体」とは、各種伝統医学の良い部分を取り込み独自に進化をしているものであり、特に一番の強みは己の手技のみで、その人のQOLつまり『クオリティ・オブ・ライフ』の充実に貢献することが出来る素晴らしい職業であると考えます。※QOL(クオリティ・オブ・ライフ)・・・「人生の質や、生活の質を指し、どれだけ自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか?」